東京高等裁判所 昭和33年(う)918号 判決 1958年10月09日
控訴人 被告人 黒川博
弁護人 斎藤竹松
検察官 長谷多郎
主文
本件控訴を棄却する。
当審における未決勾留日数中百二十日を本刑に算入する。
当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
本件控訴の趣意は被告人及び弁護人斎藤竹松提出の各控訴趣意書並びに弁護人飯島磯五郎提出の控訴趣意補充書記載のとおりであるからここにこれを引用する。これに対する当裁判所の判断は左のとおりである。
弁護人飯島磯五郎の控訴趣意補充書第一点の(四)について。
論旨は、原判示第一の(七)の(2) の車券偽造の点については、単に該文書の一小部分を改ざんしたのみで、作成名義を改ざんしたものでないから偽造ではなく、変造に過ぎない、と主張し、原判決はその法令の適用に誤りがある、というのであるが、被告人の検察官に対する昭和三十一年六月一日付供述調書(前掲のもの)及び押収にかかる軽自動車届出済証一通(当庁昭和三十三年押第三二五号の一五)によれば、被告人は川島らと共謀の上昭和二十九年三月二十三日付神奈川県知事作成にかかる同知事の記名押印のある稲村善男の軽自動車届出済証の車名欄に「シルバービジヨン」とあるのをインク消しで消して、ペンで「ジエツト」と記入し、もつて同知事の記名押印を使用して同知事の作成すべき稲村善男の軽自動車ジエツトの届出済証一通を作成したものであつて、右は従前届出のものと異なる新たな軽自動車につきその届出済証を作成したものであり、その作成名義については従前のものをそのまま使用した場合であつても、全く新たな軽自動車届出済証を作出した以上右は変造ではなく、偽造と認むべきことはいうまでもないところであるから、所論は到底採用し難く、したがつて、この点に関する原判決の法令の適用には何らの誤りも存しない。論旨は理由がない。
(その他の判決理由は省略する。)
(裁判長判事 坂井改造 判事 山本長次 判事 荒川省三)
飯島弁護人の補充控訴趣意
第一点(四) 仮りに百歩を譲つて判示の通りとしても三科及び川島は単に該文書の一小部分を改ざんしたのみで、作成名義を改ざんしたのでないから偽造ではない、変造である。然らば原判決は法令の適用に誤りがある。破毀を免れないものと信ず。(その他の控訴趣意は省略する。)